私たちフラヌールは、古本、古本屋、それから喫茶と散歩を愛する学生の集まりです。部室はまだ無い。
「フラヌール flâneur」とは、二十世紀ドイツの思想家であるヴァルター・ベンヤミンがその浩瀚な、そして論を名乗っているわりにはどこか楽しげに散漫な著作『パサージュ論』のなかで「遊歩者」という訳語をあてたフランス語です。
学生の数だけサークルが存在するといわれる早稲田大学。当然のこと文芸サークルは数あれど、その足取りに勝るとも劣らず懐の軽い早大生にとって肝心要であるはずの「古本」をテーマとしたサークルがないのを寂しく思っていました。また、古本の世界には珈琲や紅茶、そして散歩といった趣味が浅からず関わっているらしいことをつねづね感じており、有志数名の協力もあって、あらたにサークルをたち上げることにいたしました。
古本という宏大な一語の下、ジャンルや年代にこだわりすぎることなく、好きな本や見かけた本、話に聞いた本の話などを、緩々と気ままに交わすことが活動の基本となります。たとえば各人おすすめの喫茶店で、あるいは散歩の道すがら。短篇小説やエッセイを題にとった小さな読書会も、いずれは催してみたいと考えています。
日本文学、海外文学、詩、随筆、美術、漫画、映画、音楽……。それぞれ趣味はてんでばらばら、それでも気兼ねのない仲間にお互いはっぱをかけ合って、季刊程度のペースで小冊子を編んでみるのもいいかもしれません。書評やエッセイ、古書店や喫茶店の探訪記、珈琲豆比較レポート、買う前から古本みたいななりをした新刊書を紹介する「古本のタマゴ」だとか、「散歩してたら」と題して起きぬけの路面電車の写真を撮ったり等々、色々なかたちが考えられそうです。
とはいえ何といっても遊歩者なのだから、どちらかといえば好きなものとその周辺でフラフラすることに重きをおきたい。そんな向きにうってつけの、良い古本屋、喫茶店、散歩コースと三拍子揃った地域がいくつか思い浮かびます。わめぞ(早稲田・目白・雑司ヶ谷)、谷根千(谷中・根津・千駄木)、神田神保町、それから阿佐ヶ谷や西荻窪といった中央線界隈。これら一帯の喫茶店などを主な活動場所に据えたいと思います。大学図書館の談話室や近隣のメンバー宅を利用することにもなりそうです。
*
新入生はもちろんのこと、二年ないし八年目の方、大学院生、他大学生、いわゆるセカンドサークルとして利用したい方、まだ古本屋になじみではなかったり、珈琲、散歩はこれからという方まで、少しでも興味を持って頂けたのであればどなたでも歓迎いたします。ぜひお気軽に声をお掛け下さい。十一月の初めに、簡単な説明会を予定しております。
大人数の前で研究成果を披露するのではなく、また侃々諤々の議論を戦わせるのでもなく、ただ「誰かと本の話がしたい」と思ったことはありませんか。私たちを含む、そうしたいくぶん及び腰の人びとが古本、喫茶と散歩をめぐって様ざまに交流していくうちに、それぞれが生活のなかにあたらしく、充実した時間を見つけることのできるようなサークルを作りたいと思っています。
以上でフラヌールの最初の頁は終わりです。続く二頁目、三頁目に、この端書きを読んで頂いたあなたの名前が加わることになれば嬉しく思います。